若田さん、お帰りなさい

澄み渡った青空に、白い点がぽつり。よーく見ると・・・、それは白くて大きな
パラシュートを広げた、宇宙飛行士たちを乗せたカプセルでした。

「若田さん、お帰りなさい」

国際宇宙ステーション(ISS)の船長を務めた宇宙飛行士の若田光一さんが、
日本時間の14日午前11時ごろ、地球に帰ってきました。宇宙で過ごした期間は
188日。日本人として、これまでで一番長く宇宙で暮らしました。
パラシュートが落ちる速さは1秒に7メートルほど。スクーターが走るほどの速さ
で、ゆっくりと風に揺られて舞い降りてきました。目指す場所は、カザフスタン
のだだっ広い草原のど真ん中。最後にガスを一気に噴き出して、地面とぶつかる
衝撃を少しでも和らげます。
着陸してから数分後、がっしりとした体格の大男4人が、若田さんをカプセルから
優しく引き上げました。その後、6人がかりで手足や体をそっと抱えられ、近くに
用意されたソファへ。笑顔を見せて、「大丈夫」と語りかけるように親指を上に
突き上げました。
こんなに元気そうなのに、なぜ1人で歩かないのでしょうか?

実は「歩かない」のではなく、「歩けない」のです。皆さんの前にある物を持ち
上げて、手をそっと離してみてください。どうなりましたか? 下に落ちましたよ
ね。実は身の回りのものはすべて、地球の重力で引っ張られているのです。
でも、若田さんがいた宇宙にはほとんど重力がなく、宙にぷかぷかと浮いてしま
うんです! とっても楽しそうですが、大変なこともあります。皆さんみたいに力
を入れて立たなくてもいいので、半年も宇宙にいると、筋肉や骨がすっかり弱って
しまうのです。
具体的には、小腸でのカルシウムの吸収が減り、さらに骨からカルシウムが流
出。骨がスカスカになってしまいます。また血圧をうまく調節することができなく
なり、貧血にもなってしまいます。なので、地球に帰ってきたばかりの宇宙飛行士
は、自分の力で歩けないのです。

「地球は私たちみんなの、かけがえのないふるさとだなと感じた」

若田さんは地球のそよ風をほおに感じながら、そう語りました。地球の重力に慣
れて元気になったら、もっといろんなことを聞いてみたいですね!


写真提供:NASA

■関連:「宇宙」142-151ページ