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連載コラム
生きもの

海のオオカミ 前編

2017.02.06

2015年の夏、僕は北海道の知床へオオカミウオという魚を捕まえに行った。

オオカミウオはオホーツク海などの冷たい海に棲む巨大なギンポの仲間で、体長は大きなものだと150cm以上にも達する。
オヒョウと並ぶ北海最大の肉食魚だ。

そして、なによりの特ちょうはその顔立ちにある。
細長い魚体に不釣り合いなほど大きくふくれた頭部はシワくちゃで、たくさんの太く硬い歯が並ぶ大きな口を持っている。

とても魚とは思えないおっかない顔だ。


とにかく顔面のインパクトがすさまじい魚だ。

この猛獣じみた顔立ちが名前の由来となったわけだが、僕はむしろオオカミというよりはSF映画の怪獣のようだと感じる。

ここではこの魚を実際に捕まえてみてわかった彼らの秘密を公開しよう。

1.泳ぐのは苦手だけど踏ん張るのは得意!

さて、いよいよ漁師さんの協力の下、オオカミウオ捕獲作戦を開始する。

といっても特別なことをするわけではない。普通に釣り針にエサをつけて釣り上げるだけである。
ただし、道具は少々工夫する。
オオカミウオのようなニョロニョロと細長い魚は泳ぎがあまり得意でないものだ。




オオカミウオは頭こそ立派だが胴体はウツボのようなニョロニョロ体型。こういう魚はあまり遊泳力が強くない。

しかしウツボにせよウナギにせよ、こういう体型の魚は遊泳能力に代わる特技を持っている。

岩穴へ潜り込んで隙間の形に合わせて胴体をくねらせ、踏ん張るように身体を固定する技術だ。
捕獲するとなると、この能力がとても手強い。
体長1mを超えるオオカミウオが岩穴に逃げ込んだら、人間の力で引き抜くことは困難だろう。

そうならないよう、オオカミウオが針に掛かったらすぐさま力任せにその巨体を海底から引き上げなければならない。

そのため、釣り糸は人間がぶら下がれるほど強くて太いマグロ用の製品を選んだ。

餌は海底に暮らす肉食魚たちが共通して好むイカを丸ごと一匹、オヒョウ釣りに用いる大ぶりな釣り針に刺す。

知床沖の水深120 m、大きな岩礁帯へ仕掛けを投入する。海底で何かがエサに食いつく感触が釣り糸から伝わってきた。

次の瞬間、グイグイととんでもない力で釣り竿が海面へ引っ張り込まれた。巨大な魚が針をくわえて、岩山の隙間に潜り込もうとしているのだ。

無我夢中で釣り糸を手繰り寄せる。海底から引き離すと、途端に諦めたように抵抗が弱まった。
こういう挙動は細長い魚にありがちだ。

やがて黒い影が海面へ浮かび上がった。
「オオカミウオだ!」


2.動きがやたら重々しい

子供の頃からの夢が叶った。甲板へ掬い上げたオオカミウオは怒ってガチガチとタモ網の縁を噛んでいる。
カッコイイ魚だが、やっぱりおっかない。

漁師さんからと「噛まれんなよ!指なんか持ってかれるぞ!」と檄が飛ぶ。

針を結ぶスパゲッティのように太いマグロ用の釣り糸は、ところどころ、歯で平たく押し潰されていた。もう少し細い糸を使っていたら、食いちぎられて獲り逃していたかもしれない。

オオカミウオを抱え上げると、大きく身体を振って重々しく暴れる。

普通の魚のようにビチビチと跳ね回ったり、ウツボやアナゴのように身体を錐揉みさせたりはしない。

おそらく、水温の低い北の海底で代謝を抑えて暮らしているため、あまり素早い運動できないのだろう。



夢にまで見たオオカミウオを抱き上げる。時折、大きく体をよじるように暴れるが、普通の魚と比べるとのろく、おとなしい。


まだまだあるオオカミウオの秘密!!
後編へつづく…!

平坂寛(ひらさかひろし)

1985年、長崎県生まれ
幼少の頃より動植物に強い興味を持ち、「五感を通じて生物を知る」をモットーに各地で珍生物を捕獲している。
「生き物は面白い」ということを多くの人に伝えるために学生時代から生物専門のライターとして活動を開始。
ウェブサイト「Monsters Pro Shop」編集長。

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