本当にキケン? 巨大古代魚『アリゲーターガー』<前編>
2018.10.30
【巨大な生きた化石】
鎧のようにカタいボディーにワニみたいなの頭! 大きさは2メートルを超える!
それが世界最大級の淡水魚、『アリゲーターガー 』だ。アリゲーターガーをはじめとするガー科の魚は恐竜が生きていた古い時代から姿を変えていない。そのため『生きた化石』とか『古代魚』と呼ばれることもある。
ところで近ごろ、この巨大な古代魚をめぐる妙なニュースがテレビや新聞をにぎわわせている。
アメリカにいるはずのアリゲーターガーが日本の池や川でつぎつぎに見つかっているのだ。

▲ちかごろは日本中にあらわれるアリゲーターガー。なんと大阪城のお堀でも捕まっている。
かつてペットとして持ち込まれたアリゲーターガーたちが飼い主たちにすてられ、野生化してしまったというわけだ(※アリゲーターガーはじめガー科の魚は2018年から飼育が禁止されてしまいました)。
【キケンな魚って……ホント?】
アリゲーターガーたちが日本で野生化すると、ちょっとこまったことになる。
というのも、かれらが暮らすアメリカには日本と同じように春、夏、秋、冬の四季がある。つまり日本に連れてこられても、寒い冬も暑い夏も乗り越えて何年だって生きられるわけだ。
もしかするといつか、日本の川でアリゲーターガーが増えてしまう日がくるかもしれない。
そうなると大変だ。アリゲーターガーは肉食性なので、もともと日本にいた生きものが食べられ、数をへらしてしまうかもしれない。あるいはほかの魚たちのエサやすみかをよこどりしてしまうかも。
ブラックバス(オオクチバス)と同じように日本の生態系をこわしてしまうのではと心配されているのだ。
しかし、中には「それホント?」と思ってしまうような話も聞こえてくる。
アリゲーターガーが「人をおそうキケンな魚」だというのだ。
うーん?たしかに見た目はかなりおっかないけども…。本物のワニでもあるまいし、人を食うなんてことがあるだろうか?
真相を確かめるべく、僕はアメリカ・テキサス州へ飛んだ。

▲アリゲーターガーのくらす川 (アメリカ テキサス州)
【いざ『ガーの穴』へ!!】
テキサスのある川には『ガーの穴』と呼ばれるアリゲーターガーがうじゃうじゃ集まる秘密の場所がある。
ガーの穴にボートを浮かべてじっと水面を見つめていると、たしかになにか大きな生きものが次々に水面でバフバフと音を立てて息つぎしている。
…どうやらこれが全部アリゲーターガー (とそのほかのガーの仲間)らしい。
じゃあさっそく本場のガーを捕まえてみようじゃないの!
まずはガーを捕獲するための秘密兵器を用意しよう。それは…コイだ!

▲エサはコイ。血のにおいの強いため、アリゲーターガーがすぐに集まってくる。
日本にアリゲーターガーが入ってきたように、アメリカには日本や中国からコイが持ちこまれてふえているのだ。
網や弓矢(!)でコイを捕まえ、ぶつ切りにして釣りバリに刺す。アリゲーターガーは目だけでなく鼻も使ってエサを探す。コイはとてもニオイがつよく、見つけてもらいやすいのだ。
ちなみに歯がするどいので釣り糸のかわりにワイヤーをつかうぞ。
コイを投げこんで10分ほど。釣りざおがグイグイと曲がり、するどい歯が並んだくちばしが水面からとびだした。
「アリゲーターガーが食いついたぞ!!」

◀︎出たー!アリゲーターガー。たしかにくちばしだけ見るとアリゲーター(ワニ)のようにも見える。
▶︎まだ若いアリゲーターガー。これで2才くらいかな?

▲サメやピラニアなど肉をかみ切るタイプの魚の口には三角形ではばの広い歯がすきまなく並んでいる。
【エサを『かむ』のでなく『おさえこむ』ための歯】
釣れたアリゲーターガーの頭を上から見おろすとたしかにワニのようなくちばしだが、横から見るとうすくて歯も細かい。どちらかというと海水魚のダツに似たつくりだ。
こういう小さくするどい歯がびっしり生えている口はエサをかみちぎったり、くだいたりするのには向いていない。これはせっかく捕まえたエサに逃げられないようにしっかりおさえこむため、そして落っことさずに持ちはこぶための歯なのだ。
後半へ続く!
結局のところ、アリゲーターガーは人をおそう危険生物なのか!?
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平坂寛(ひらさかひろし)
1985年、長崎県生まれ
幼少の頃より動植物に強い興味を持ち、「五感を通じて生物を知る」をモットーに各地で珍生物を捕獲している。
「生き物は面白い」ということを多くの人に伝えるために学生時代から生物専門のライターとして活動を開始。
ウェブサイト「Monsters Pro Shop」編集長。
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