キノコを育てるアリ『ハキリアリ』<後編>

モンスターハンター平坂寛の びっくり! 生きもの烈伝

こんもりと盛り上がったハキリアリの『アリづか』。でっかい!!
なお、ハキリアリは育てたキノコを僕らが知っているカサと柄がついたキノコ(子実体という)のカタチではなくカビのような状態(菌糸体という)でつみ取って食べてしまう。
僕もちょっとだけ分けてもらって味見をしてみたことがあるが、見た目も味も「カビの生えた土」といったところで、残念ながら人間が食べておいしいものではない。
アリづかの中で育てられたキノコ。ハキリアリはこれだけを食べて生きている。
【ほかのアリとも仲がいい(?)】
そういえばハキリアリを観察していておもしろいことに気がついた。
ハキリアリはほのかアリと出会ってもケンカしないのだ。

ふつうちがう種類のアリたちが出会うと大ゲンカになる。

ところがハキリアリは巣の周りをほかのアリがうろついても、葉っぱをはこぶ行列にまぎれこんでも、怒って攻撃したりはまったくしない。仲がいい…というよりおたがいにどうでもよさそうなそぶりだ。
ハキリアリはほかのアリと出くわしてもほとんどケンカをしない。おたがいになんとも思っていないみたいだ。
これはおそらく、食べているものがまったくちがうためナワバリあらそいをする必要がないためではないだろうか。
だがもちろん、グンタイアリのようにハキリアリを狩ろうとするアリに対しては本気を出して戦うようだ。
ハキリアリの行列の中にお菓子を置くと、ハキリアリではなくほかの小さなアリたちが食べにくる。アリが二種類いてこの状況でケンカにならないのは実はすごいこと。
ところで、ふつうのアリはほかのアリやトカゲ、クモなどの敵と戦うときにおしりを敵へ向けて『ギ酸(ぎさん)』というすっぱいニオイのする成分を含んだ液体をひっかける(ヒアリやグンタイアリのように毒針を持つものもいる)。ところがハキリアリはつまみあげてイタズラをしてもぜんぜんギ酸のイヤなニオイがしない。かれらはどういうわけかギ酸をほとんど持っていないようだ。

となるとハキリアリの武器はアゴのみ。

葉っぱを切りきざんでいるだけあって、かむ力はとても強い。うっかりビーチサンダルで行列をふんづけたりするとするとかな〜り痛い目にあうぞ。
葉っぱを切れるだけあってアゴの力はとても強く、かまれるとけっこう痛い。体にはトゲが生えているし、身を守るためにギ酸を使う必要がないのかもしれない。
ギ酸を持っていない理由はいろいろ考えられる。

キノコばっかり食べてるとギ酸を作る材料が足りないのかもしれないし、ほかのアリとケンカすることがあまりないからわざわざギ酸を持つ必要がないのかもしれない。
あるいは、アゴだけで十分戦えるからほかの武器なんかいらねえ!という進化をとげた結果なのかもしれない。
……みんなはどう思う?答えがわかったら教えてください!