馬をもたおす!? アマゾン最強・最恐の魚『デンキウナギ』<後編>

アマゾンでいちばん恐れられているのは『電撃をはなつ』という超能力を持った魚、デンキウナギだ!

<感電!>

さあ、いよいよ触るぞ!触るぞ!?
アマゾン最強はどんなもんだ!?

おそるおそる手をふれた次の瞬間、「ブブブンン!」と手のひらから肩と首へ衝撃が走った!

痛い! ……すごい威力だ。

手をひっこめてしまったが、次はもっとしっかり触ってみよう。
※マネしないでください
気をとりなおして、今度はにぎるようにしっかりつかむ。「ビビビッ!」ちょっと弱くなったが、それでも痛い!しびれる!!

そしてやはり、ひっこめようとは思っていないのに、腕が勝手に曲がってひっこむ。筋肉というのは強い電気が流れるとギュッとちぢんで動いてしまうものなのだ。

たしかにデンキウナギは敵に対して電気をはなつ。本で読んで知ってはいたことだったが、こうして自分の身をもってたしかめることができた。……しかし捕まえられた直後でいくらか弱っていただろうとはいえ、馬を倒せるほど強い電撃とも思えない。まあそれでもめっちゃ痛かったけどな。涙出そうなくらい。

<電撃は水中だとより強力に!>

デンキウナギにくわしいアマゾンの漁師さんに話を聞いてみると
「陸上でさわればものすごく痛いけれど、たいへんなことにはなりにくい。キケンなのは水中で感電したときだ。」
という。

水中では電気がつたわりやすく、しびれが強くなる。そうなると痛みもさることながら、うまく体を動かすことができずにおぼれてしまうことがあるのだそうだ。また、デンキウナギは同じ場所にたくさん群れることがある。そいう場所だとうっかり1匹を発電させてしまうと、それにおどろいたほかのデンキウナギたちが次から次に放電してしまうという非常事態が起きるらしい。川で泳いでいるときにそんなことになったら……。うーん、考えたくもない。

でも、やっぱりちょっとだけその感覚も味わっておきたい。浅く安全な水辺にデンキウナギを泳がせ、自分も飛び込む。ここならおぼれはしないし、ほかのデンキウナギたちもいない。じゃあ触ってみようかな~、と思うが早いか、

「ビビビビビビビビビッ!!」

うおおお!
まだ触ってもいないのに手の先から足の先までしびれたっ!!
※マネしないでください
デンキウナギが放った電流が水を伝って僕の体に届いたのだ。しかも、陸上でじかに触った時よりも威力が強い……!!
なるほど……よーくわかった。こりゃたしかにめちゃアブないな!3発の電撃を食らったあたりで怖くなって水から飛び出た。見ていた漁師さんに「水中はアブないってさっき言ったばっかりだろ!?」と怒られた。
しかし、体をはったおかげでデンキウナギの電流の真実はたしかめられた。……だからよい子は真似しないでください!

<おしりの穴がそんなところに!? 電気味のさしみ!?>

ところで、なぜデンキウナギはこんなにも強力な電気を生み出すことができるのか。
その秘密をとくカギは意外にも彼らのおしりの穴にある。
デンキウナギのおしりの穴は口のすぐ後ろ、ヒトでいうところののど元に空いている。
キミ、そんなとこからうんち出すの!?
動物の内臓というのは口と食道からはじまって胃や腸につながり、おしりの穴、つまり肛門で終わる。ということはデンキウナギの内臓はヒトでたとえるならのどから胸のあたりにギッチギチにつまっていると言える。じゃあそこから後ろにニョロニョロと伸びた体には何がつまっているのか!?
おしりより後ろにニョロロ〜ンと伸びたデンキウナギのボディー。そこに詰まっているのは……!
内臓をむりやり前の方につめ込んでまで確保したスペースにはみっちりと『発電器』がしこまれている。さながら乾電池を大量にならべまくったような……、とにかく『より強い電気を生み出す!!』ということだけにこだわったような体のつくりなのだ。
デンキウナギの発電器は進化の過程で筋肉が変化してできたもので、白くブヨブヨしたアブラ身のような見た目をしている。このブヨブヨからあんなすさまじいビリビリが生まれるのか……。
デンキウナギの体を切ると、身の半分以上は白くて変なブヨブヨ。ここが発電器官だ!
いかにアマゾンとはいえ。こんなに不思議でおもしろくて、その上カッコよくてアブない生きものはなかなかいないぞ。
やっぱりデンキウナギ最高!そして最強!!

ちなみに、おさしみで食べるとなんと電気の味がするぞ!
ん?電気の味ってどんな味かって?うーん、そうだなー。アルミホイルをかじった時の味かな!
……つまり、あんまりおいしくはないってことです。