豚肉と木の棒で、スズメバチ軍団が壊滅 その1

<1本の電話>

ある夏の日、家で録画したアニメを見ていたとき、私の携帯電話が鳴った。

かけてきたのは、同じ大学の同じクラスの、しかし、そんなに親しくもない奴。
彼がいうことには、どうも自分の住むマンションの玄関先に、スズメバチが巣を作り始めたらしい。
このままだとどんどん巣が大きくなり、出入りのたびに襲われそうだ。でも、自分で巣をとるのはおっかない。

「お前は虫にくわしいだろうから、どうにかこの巣を取り除いてほしい」
という話だった。

正直、その話を聞いただけでは私は協力する気にはなれなかった。なにしろ危険だし、そんなに親しくもない奴のためにそこまでしてやる理由もない。

ハチ退治の業者にでも頼めばいいだろ、と、私は電話口で彼に告げるつもりだったが、私がそれをいうよりも早く「もし巣を取ってくれたら、メーヤウ(当時、大学のそばにあったカレー屋)の焼き飯を一杯おごるからさぁ。」といわれた。

私は、二つ返事でスズメバチの退治を引き受けた。


<必殺! 豚肉おびきよせ作戦>

その日の夜、さっそく私は彼の住んでいるアパートまで出かけた。

彼の住んでいる部屋は3階。
ドアのチャイムを押して、そいつにハチの巣のありかを聞くまでもなく、ドアのすぐ真上、だいたい高さ3mくらいの天井に巣はあった。

何となく予想はしていたが、コガタスズメバチのものだった。
大きさはサッカーボールより一回り小さいくらいで、私一人でも十分とれそうだった。
コガタは、日本のスズメバチとしてはわりとおとなしめの部類だ。とはいえ、相手はスズメバチ、油断はできない。

さて、これをどうするか。


写真:コガタスズメバチ

いくら働きバチを退治しても、女王バチを逃すと、また巣を作り直してしまう。

また、下手に退治しようとして失敗すると、ハチどもが狂暴化し、このアパートの住人たちをかえって危険にさらす。
やるならば徹底的にやらねばならないが、あの巣の中に何匹ハチが隠れているかもわからない状態で、うかつなまねはできない。

考えた結果、ある方法を思いついた。

私は、ハチ退治をたのんできたその彼に、
「何か、いらない豚肉とか魚の切り身とかないか?」
と聞いた。冷蔵庫に古い豚バラ肉があるというので、それを取ってこさせ、その間に私は近所の道ばたに出て、あの巣に届く長さの木の棒をひろってきた。

その棒の先に、私は豚肉を巻きつけた。そして、その豚肉つきの棒で、ハチの巣の表面を軽くなでた。

すると、巣の中から一匹のハチが何事かと出てきた。
ハチは豚肉つきの棒が自分の巣に触っていることに気づくと、すぐに駆け寄って豚肉に飛びついた。
そして、その豚肉にガリガリとかじりつき始めたではないか!


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スズメバチは豚肉がお好き!?
その2につづく。
お楽しみに!